私の社会人キャリアの出発点は、新聞に載せる広告の校正でした。「〇〇新聞広告制作センター」の片隅で、記号と用語を先輩に教えてもらい、赤鉛筆で訂正を書き込む日々。同じフロアには、新聞社オリジナルの「ルールブック」を片手に校閲に勤しむ「校閲さん」の姿もありました。
そもそも校正と校閲って違うの?どんな用語があるの?など、当時を思い出しながら書いてみようと思います。
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「校正」と「校閲」の違い
「校正」とは、文章に誤字や脱字、媒体で決められた表記ルールなどの誤りがないかをチェックし、間違いを修正する作業です。一方、「校閲」は、文章の内容や意味に誤りがないかをチェックし、間違いを修正する作業です。
例えば、「2020年に開催された東京オリンピックでは~」という文章がある場合、
「2020」と半角と全角が混ざっている点を修正するのは校正の役割、「東京オリンピックが開催されたのは2021年」という修正を行うのは校閲の役割です。
WEB記事でも使う校正用語
校正用語は、出版物やチラシなどの制作会社や、印刷会社、WEBコンテンツ制作会社などで使われています。その中で、WEB記事を制作する際によく使われている用語を紹介します。
「初稿」と「初校」
どちらも同じ「しょこう」ですが、漢字が変わると意味も変わります。
「初稿」とは、最初の原稿のこと。WEB記事の場合では、ライターから校正担当に渡すもののが「初稿」です。
「初校」とは、「最初の校正を行った原稿」のことです。校正担当が校正後に納品する原稿は「初校」となります。
「ひらく」と「とじる」
校正の現場では、漢字を「ひらく」、ひらがなを「とじる」という使い方をします。漢字をひらがなに直すことが「ひらく」、ひらがなを漢字に直すことが「とじる」の意味です。
WEB記事の制作現場では、媒体が独自の表記ルール(レギュレーションと呼びます)を設けている場合がほとんどです。レギュレーションを定める目的のひとつは、同じ単語なのに2通り以上の表記が使われる「表記ゆれ」を防ぐためです。表記ゆれがある文章は、無意識のうちに読み手にストレスを与えます。そのため、誰が書いても同じ表記になるよう、「とじる」言葉と「ひらく」言葉を媒体ごとに決めているのです。
また、「とじる」「ひらく」の使い分けで、WEB記事全体の印象を決めることもできます。「とじる」表記をすると漢字が多くなるので硬い印象に、「ひらく」表記をするとひらがなが多くなるので柔らかい印象になります。
WEB記事制作の現場では、媒体からのレギュレーションの形で、「この言葉はひらく(とじる)」と使われていることが多いです。
紙媒体ではさらに多くの校正用語が
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WEBでは使わない「トル」「ママ」
紙媒体の制作現場で使う代表的な校正用語には、「トル」と「ママ(イキとも呼びます)」があります。
「トル」とは、余分な文字を削除する意味です。
例えば、「余分なな文字を削除します。」という文章があったとします。この文章には「な」が重複していますね。
そこで、余分な「な」のところに「トル」と指示を入れる、というわけです。
「ママ(イキ)」は、修正指示を一旦入れたものの、その修正を取りやめて元のままで進めてもらいたいときに使います。
WEB記事の原稿はWordで作成するケースがほとんどなので、校正中に文字の重複を見つけた場合は、校正担当が自分で削除することができます。また、修正を取りやめたい場合は、校正担当がもう一度元の文章を打ち直せば元に戻ります。そのため、WEB記事制作の現場では「トル」「ママ(イキ)」は使われません。
校正・校閲は、記事の質を上げるのに大切な工程であることが実感いただけたでしょうか。より読みやすく、信用できる記事を制作するには、地道な確認も必要なのです。